今朝、歯を磨いてうがいをしたとき、洗面台に赤いものが混じっていませんでしたか?

「毎日ちゃんと歯磨きしているのに、なぜか歯茎から血が出る」
「歯医者さんで歯周病と言われて、一生懸命磨いているのになかなか良くならない」
そういう方に、一度見直してほしいものがあります。
それが、毎日の食事です。
「歯周病で食べてはいけないものなんてあるの?」と思うかもしれませんね。もちろん、特定の食品を一口食べただけで歯周病になるわけではありませんし、何か一つを完全に禁止すれば歯周病が治るわけでもありません。
ただ、食習慣の中には、歯周病の背景にある炎症や血糖コントロール、プラーク環境などに影響し、歯周組織にとって好ましくない方向へ働く可能性のあるものがあります。
特に注目したいのが、砂糖を多く含む飲み物や食品です。
2022年に発表されたシステマティックレビューでは、遊離糖を含む食品・飲料と歯周病の関係を調べた13研究のうち、11研究で頻繁な摂取と歯肉炎・歯周炎の有病または発症との有意な関連が報告されました。ただし、12研究は横断研究だったため、「砂糖を摂れば必ず歯周病になる」と因果関係まで断定できる段階ではありません。(1)
ここで大事なのは、怖がって何も食べられなくなることではありません。
「何を減らし、何を組み合わせ、そして歯科治療とどう両立すればいいのか」
そこまで理解することです。
この記事では、
- 歯周病で食べてはいけないものとして注意したい食品・飲料
- なぜ血糖と炎症が歯周病に関係するのか
- 甘いジュースやお菓子はどこまで問題なのか
- ビタミンCやサプリだけで歯周病は治せるのか
- 今日の食事から始められる現実的な改善法
まで、できるだけわかりやすくお話しします。
なお、これから「8位〜1位」と紹介しますが、これは学会やガイドラインが定めた公式な危険度ランキングではありません。現在の研究では各食品のリスクを直接比較して「1位、2位」と確定できるほどのデータはありません。
この記事では、現在確認できる研究、遊離糖や血糖への影響、栄養バランス、日常的な摂取頻度などをもとに、患者さんに優先して見直してほしい順番として整理しています。
歯周病は歯磨きだけの問題?食べ物にも目を向けたい理由
歯周病の直接的な原因の中心は歯面や歯周ポケット周辺に形成される細菌性バイオフィルムですが、喫煙、糖尿病をはじめとする全身状態や生活習慣も病気の進行に関係します。食事は治療そのものではない一方、炎症や代謝を支える「土台」の一つです。(8)(10)

よくSNSで、
「歯周病にはビタミンCがいいらしいから、毎朝フルーツジュースを飲んでいます」
という話を見かけます。
一見すると、かなり健康的ですよね。
でもここには落とし穴があります。
ビタミンCそのものは、コラーゲン形成をはじめ正常な組織維持に必要な栄養素です。実際、ビタミンC摂取量や血中濃度の低さと歯周病との関連を示す研究があります。(4)
ところが「ビタミンCを摂ること」と「甘いジュースを毎日飲むこと」は、同じ話ではありません。
WHOも、果汁100%であっても多くのフルーツジュースには相当量の遊離糖が含まれるため、摂取を制限するよう示しています。(9)
つまり、
「ビタミンCが必要」
だから
「甘いジュースを毎日飲めば歯周病に良い」
とはならないんです。
これは、火を消そうとしているのに、別の方向から燃えやすいものを足してしまうようなものです。
SNSではどうしても、「これを食べれば治る」「これさえやめれば治る」といった極端な情報のほうが広がりやすいですよね。
でも、歯周病はそんなに単純ではありません。
歯磨き粉を変える。
高価な歯ブラシを買う。
電動歯ブラシにする。
もちろん、それぞれ意味があります。
ただ、毎日何度も口にする食事や飲み物をまったく見直していないのであれば、一度そこにも目を向けてみてください。
なぜ食事で歯周病が悪化する?高血糖と慢性炎症の関係
糖尿病と歯周炎には双方向の関連があります。血糖コントロール不良は歯周炎のリスクや重症度に影響し、反対に歯周炎も全身の炎症や血糖管理に影響し得ることが示されています。(2)(3)
ここから少し医学的な話をします。
でも難しく考えなくて大丈夫です。
キーワードは、「高血糖」と「慢性炎症」です。
高血糖が続くと歯茎にも影響する

甘い飲み物や精製された炭水化物を大量に摂取すると、食後の血糖値が大きく上昇することがあります。
もちろん、一度血糖値が上がったから、その瞬間に歯周病が進むわけではありません。
問題になるのは、血糖コントロールが悪い状態が長く続くことです。
糖尿病と歯周炎についてのEFP・IDFコンセンサスでは、高血糖に伴うAGEs、つまり終末糖化産物とその受容体を介した経路、酸化ストレス、炎症性サイトカインなどが、両者を結びつける生物学的機序として示されています。(2)
AGEsという言葉は聞き慣れませんよね。
かなり乱暴にイメージするなら、長期間の高血糖によって体内のタンパク質などが糖化し、組織が正常に働きにくくなっていく現象です。
動画では「血管や組織が内側からサビて、コゲついていくようなもの」と表現しました。
もちろん実際に焦げるわけではありませんが、それくらい「長く続く高血糖は組織環境にとって好ましくない」と考えてください。
歯周病と糖尿病は「一方通行」ではない
さらに大事なのは、歯周病と糖尿病の関係が一方通行ではないことです。
歯周組織で炎症が続けば、IL-1β、TNF-α、IL-6などの炎症性メディエーターが関わり、全身の炎症やインスリン抵抗性との関連が生じます。(2)
逆に糖尿病で高血糖が続けば、歯周組織の炎症反応や治癒にも影響します。
つまりイメージとしては、
悪い食習慣や代謝状態
↓
血糖コントロールへの悪影響
↓
歯周炎を悪化させ得る環境
↓
慢性炎症
↓
さらに血糖管理にも影響
という「負のドミノ倒し」が起こり得るということです。
そしてこの関係は、単なる理論だけではありません。
2022年のCochraneレビューでは、糖尿病と歯周炎がある人に歯周治療を行った場合、治療を行わない場合または通常ケアと比較して、3〜4か月後のHbA1cが平均0.43ポイント低下していました。エビデンスの確実性は「中等度」と評価されています。(3)
ここで勘違いしてほしくないのは、「歯周病を治せば糖尿病も治る」という意味ではないことです。
あくまで、歯周炎と糖尿病は互いに無関係ではなく、両方を適切に管理することに意味がある、という話です。
歯周病で食べてはいけないものは?注意したい食べ物・飲み物ワースト8
絶対禁止の食品が8種類あるわけではありません。ポイントは「頻度」「量」「食べ方」です。特に遊離糖を頻繁に摂る習慣は優先して見直したい一方、野菜、果物、食物繊維、タンパク質などを含むバランスのよい食事を整えることも大切です。(1)(9)(10)
8位:栄養密度の低い食事ばかり続ける

まず8位は、特定の食品というより「栄養密度の低い食生活」です。
例えば、
朝は菓子パン。
昼はカップ麺。
夜はお酒とスナック菓子。
こんな食事が毎日のように続いているケースです。
歯周治療後に組織が修復していくためには、正常な代謝や組織形成を支えるタンパク質、ビタミン、ミネラルなどが必要です。
WHOは健康的な食事の基本として、十分な栄養、バランス、節度、多様性を挙げ、野菜、果物、豆類、全粒穀物、良質なタンパク源など多様な食品を組み合わせることを推奨しています。(9)
2026年のスイス歯周病学会のポジションペーパーでも、食物繊維が多く遊離糖の少ない食生活を、歯周治療を補完する要素として位置づけています。(10)
大切なのは「スーパーフードを一つ足す」ことではありません。
食生活全体を整えることです。
7位:野菜・果物が極端に少ない食生活

7位は、野菜や果物をほとんど食べない食生活です。
ここで関係してくる栄養素の一つがビタミンCです。
ビタミンCはコラーゲン形成などに必要な栄養素で、歯周組織にとっても重要です。
2019年のシステマティックレビューでは、横断研究7件すべてでビタミンC摂取量または血中濃度と歯周病との逆相関が報告され、低いビタミンC摂取量・血中濃度を持つ人ほど歯周病が進行しやすい傾向も報告されました。(4)
ただし、ここから
「ビタミンCサプリを大量に飲めば歯周病が治る」
とは言えません。
むしろ、まずは野菜や果物など通常の食事から必要な栄養を確保することを考えてください。
そして果物を摂る場合も、「果物そのもの」と「大量のフルーツジュース」は分けて考えましょう。WHOは果汁に含まれる遊離糖についても摂取を抑えるよう勧めています。(9)
6位:アルコールの多量摂取

6位は、アルコールの多量摂取です。
「お酒を一滴でも飲んだら歯周病になる」という話ではありません。
アルコールと歯周炎の研究にはばらつきがあります。
2022年に前向きコホート研究を再評価したシステマティックレビューでは、高いアルコール摂取量と歯周炎について全体として明確な有意差は確認できず、一部の男性集団でリスク上昇が示されたものの、エビデンスの確実性は低いと評価されています。(5)
一方、過去の観察研究をまとめたメタ解析では関連を示す報告もあります。
ですから患者さんに伝えるときは、
「お酒は歯周病の原因だから絶対禁止」
ではなく、
「多量飲酒を続けているなら、歯周病だけでなく全身の健康も含めて量を見直しましょう」
という伝え方が適切です。
唐揚げにビール。
最高ですよね。
たまの楽しみまで全部奪う必要はありません。
問題は、それが毎晩の基本パターンになっていないかです。
5位:揚げ物・脂身の多い肉・加工肉中心の食生活

5位は、揚げ物や脂身の多い肉、加工肉ばかりに偏った食事です。
ここも、「豚肉を食べたら歯周病になる」「揚げ物禁止」という話ではありません。
問題は食生活全体のパターンです。
2025年のシステマティックレビューでは、精製炭水化物が少なく、飽和脂肪が少なく、食物繊維と栄養密度の高い食事を評価した9研究のうち8研究で、歯周組織の指標の改善との関連が示されました。ただし、研究の質は低〜中等度で、食事内容や研究方法にもばらつきがあります。(6)
また、2019年のランダム化比較試験では、加工炭水化物や一部の動物性食品を減らし、オメガ3脂肪酸、ビタミン、抗酸化物質、食物繊維などを多くした食事群で、4週間後の歯肉炎指標が改善しました。(7)
ですから、
「脂を一切食べない」
ではなく、
「揚げ物や加工肉だけに偏らず、魚、豆類、野菜、全粒穀物なども組み合わせる」
くらいから始めてください。
4位:スナック菓子・カップ麺などの超加工食品

4位は超加工食品です。
スナック菓子、菓子パン、一部のカップ麺、砂糖を多く含むシリアルなど、加工度が高く、糖・塩分・脂質が多くなりやすい食品です。
ただし、この項目は少し注意して読んでください。
「超加工食品そのものが歯周病を直接起こす」というエビデンスは、まだ一貫していません。
ブラジルの集団を調べた研究では、中等度・重度歯周炎と超加工食品摂取との関連が報告されています。(12)
一方、米国NHANESの4,809人を分析した別研究では、超加工食品から得るエネルギー割合と中等度・重度歯周炎との有意な関連は確認されませんでした。(11)
つまり、現時点では研究結果が一致していません。
それでも超加工食品中心の生活では、遊離糖や精製炭水化物の摂取量が増え、野菜、果物、食物繊維などが不足しやすくなる可能性があります。
ですから、「カップ麺を食べたらアウト」ではなく、
「食生活の大半が超加工食品になっていないか」
を見ることが大切です。
3位:白米・白パン・麺類などを「単品で大量に」食べる習慣

3位は白米、白パン、うどん、麺類などです。
ここはかなり誤解されやすいので、はっきり言います。
白米やパンそのものを、歯周病だから禁止する必要はありません。
問題にしたいのは、
「うどんだけ」
「大盛りの白米だけ」
「おにぎりだけ」
「パンだけ」
という、精製炭水化物に偏った単品食べを日常的に続けることです。
炭水化物は人間に必要な主要栄養素です。WHOも、一般の人では炭水化物を食事から排除するのではなく、主に全粒穀物、野菜、果物、豆類など精製度の低い食品から摂ることを推奨しています。(9)
また、歯周病と血糖代謝には双方向の関連があるため、糖尿病や血糖値を指摘されている方では、歯科と医科の両方で管理することが特に重要です。(2)(3)
忙しいと、
「お昼は菓子パンだけ」
「時間がないからおにぎり2個だけ」
とやってしまいますよね。
そんなときは、「炭水化物を抜こう」と考える必要はありません。
一品足してください。
おにぎりなら、ゆで卵とサラダ。
うどんなら、卵、鶏肉、わかめ、ネギ。
パンなら、卵やチキン、野菜。
これだけでも、食事全体の栄養バランスは大きく変わります。
2位:お菓子・菓子パン・甘いシリアル・アイス

2位は、お菓子、菓子パン、甘いシリアル、アイスなどです。
これらに共通しやすいのが、遊離糖や精製された炭水化物を多く含むことです。
遊離糖と歯周病を扱った2022年のシステマティックレビューでは、13研究中11研究で、砂糖を含む食品または飲料を頻繁に摂る人ほど歯肉炎・歯周炎の有病または発症が多いという有意な関連が報告されています。(1)
ただし、ここでも「ケーキを一つ食べたから歯周病が進行した」とは言えません。
重要なのは頻度です。
毎日、
午前10時にお菓子。
午後3時に菓子パン。
夕食後にアイス。
仕事中には甘い飲み物。
というように、糖を含む飲食の回数が積み重なっていないでしょうか。
「甘いものを一生禁止する」のではなく、
「毎日ダラダラ食べる習慣を減らす」
ここから考えるほうが現実的です。
1位:ジュース・加糖缶コーヒー・スポーツドリンクなど砂糖入り飲料

そして、この記事で最優先に見直してほしいのが、砂糖入り飲料です。
例えば、
- 清涼飲料水
- 砂糖入りジュース
- 加糖缶コーヒー
- 加糖ラテ
- スポーツドリンク
- エナジードリンク
- 砂糖を多く加えた紅茶やコーヒー
などです。
なぜ飲み物を1位にしたのか。
最大の理由は、「飲む回数を増やしやすい」からです。
固形のお菓子なら「ケーキを1時間かけて少しずつ食べよう」とはあまりなりません。
でも、甘い缶コーヒーやスポーツドリンクなら、机の横に置いて、午前中ずっとチビチビ飲むことがありますよね。
遊離糖を含む食品・飲料の頻回摂取と歯周病との関連を示す研究が多いことに加え、WHOも遊離糖を総エネルギー摂取量の10%未満に抑え、可能であればさらに少ない摂取を検討するよう推奨しています。(1)(9)
「飲み物だから大丈夫」
ではありません。
むしろ、自分では糖を摂っている感覚が薄いまま習慣化しやすいところが問題なんです。
まず一つだけ生活を変えるなら、普段の水分補給を無糖の水やお茶に置き換える。
これは非常に取り組みやすい方法です。
歯周病に良いならビタミンCサプリを飲めばいい?「自然派」の落とし穴
食事改善やビタミンCは歯周組織の健康を支える可能性がありますが、歯周ポケット内のバイオフィルムや歯石を取り除く歯周治療の代わりにはなりません。食事はあくまで歯周治療を補完する要素です。(4)(8)(10)
ここまで読むと、
「よし。明日から砂糖は一切やめて、ビタミンCのサプリをたくさん飲んで、野菜だけ食べればいいんですね」
と思う方がいるかもしれません。
違います。
ここは非常に大事なところです。
食事だけで歯周病を治そうとしないでください。
歯周病の中心にはバイオフィルムがある
歯周炎は、多因子性の「バイオフィルム関連・免疫炎症性疾患」と理解されています。(10)
バイオフィルムとは、複数の細菌などが集まり、細胞外の物質に守られながら形成する構造です。
もっとわかりやすく例えましょう。
お風呂場の排水口のヌメリを想像してください。
あのヌメリに向かって、
「今日から栄養バランスを良くします!」
と言っても消えませんよね。
上からビタミンCの粉をかけても取れません。
まず物理的に清掃する必要があります。
歯周病治療も同じ考え方です。
歯科医院では、歯周ポケット内のプラーク、歯石などを専門的に除去する「歯肉縁下インスツルメンテーション」などの歯周基本治療を行います。
EFPのStage I〜III歯周炎治療ガイドラインも、行動変容、口腔衛生管理、専門的な歯肉縁上・歯肉縁下の処置を段階的に行う治療体系を示しています。(8)
ですから、
食事療法だけ
サプリだけ
歯磨き粉だけ
洗口液だけ
という発想は避けてください。
ビタミンCは大切。でも「多ければ多いほどいい」ではない
ビタミンCと歯周病との関連を示す研究はあります。(4)
しかし、2019年のシステマティックレビューでは、ビタミンC投与によって歯肉炎の出血指標が改善した研究がある一方、歯周炎における骨吸収などの改善は確認されていません。(4)
つまり、
「ビタミンC不足を避けること」
と、
「大量のサプリで歯周炎そのものを治療すること」
はまったく別の話なんです。
2026年のスイス歯周病学会ポジションペーパーも、栄養を歯周治療における「補完的」な要素として位置づけています。(10)
この順番を逆にしないでください。
歯周病の食事改善|今日からできる3つのステップ
難しい食事療法を始める必要はありません。まず「甘い飲み物を減らす」「炭水化物だけで済ませない」「野菜・食物繊維・タンパク質を組み合わせる」の3つから始めると実践しやすいでしょう。
ここからは、今日の次の食事からできる話にします。

Step1:甘い飲み物を無糖の水・お茶へ置き換える
最初に変えるなら、ここです。
普段の水分補給として飲んでいるジュース、加糖缶コーヒー、スポーツドリンク、加糖ラテなどを、無糖の水またはお茶へ置き換えてみてください。
毎日3食を完璧な栄養食に変えるより、習慣化している甘い飲み物を1本減らすほうが簡単な人も多いはずです。
砂糖入り飲料を「ご褒美としてたまに飲むもの」に変え、普段の水分補給から外す。
まずはそこを目指しましょう。
Step2:炭水化物の「単品食べ」をやめる
次は、
おにぎりだけ。
パンだけ。
うどんだけ。
という食べ方を変えます。
ここでのポイントは、炭水化物を悪者にしないことです。
白米も、うどんも、パンも、食べてかまいません。
ただ、一品足してみてください。
例えばコンビニなら、
おにぎり+ゆで卵+サラダ。
うどんなら、
うどん+卵+鶏肉+わかめ+ネギ。
パンなら、
パン+卵やチキン+野菜。
「禁止」より「追加」のほうが続けやすいんです。
Step3:タンパク質・野菜・食物繊維を意識する
最後は、歯周組織だけを見るのではなく、体全体が正常に働くための食事を整えることです。
魚、卵、豆類、肉などからタンパク質を摂る。
野菜や果物を取り入れる。
豆類、野菜、全粒穀物などから食物繊維を摂る。
WHOも、野菜・果物・豆類・全粒穀物・良質なタンパク源など、多様な食品を組み合わせる食事を勧めています。(9)
歯周病だからといって、「歯茎専用の特殊な食事」を用意する必要はありません。
基本は、全身にとっても無理のない健康的な食生活です。
歯茎から出血しているなら、食事改善より先に歯医者へ行くべき?
出血、腫れ、口臭、歯のぐらつきなどが続いている場合は、食事改善だけで様子を見るのではなく歯科医院で歯周組織を評価してもらうことが大切です。歯周病の診断には歯周ポケット検査や画像検査などが必要になります。
「じゃあ食事を変えて1か月くらい様子を見て、それでも血が出たら歯医者に行こう」
と思った方。
順番を逆にしないでください。
歯周病が疑われるなら、まず歯科医院で状態を確認してもらいましょう。
歯周病は、痛みが少ないまま進行することがあります。
自分では「ちょっと血が出るだけ」と思っていても、歯周ポケットが深くなっていたり、歯を支える骨に変化が起きていたりすることがあります。
食事改善でできるのは、歯周治療に適した土台を整えることです。
歯周ポケットの中に付着した歯石やバイオフィルムへの専門的処置は、食事では置き換えられません。(8)(10)
毎日のセルフケア。
歯科医院でのプロフェッショナルケア。
必要に応じた食生活や全身状態の改善。
そして治療後の定期的なメインテナンス。
この両輪、いえ、複数の要素が揃って初めて、歯を長く守る方向へ進んでいきます。
まとめ|歯周病で本当に避けたいのは「一つの食品」より悪い習慣の積み重ね
歯周病で絶対に食べてはいけない食品が決まっているわけではありません。ただし、遊離糖を含む食品や飲料を頻繁に摂る習慣、栄養の偏った食生活は見直す価値があります。そして食事改善だけで歯周病を治そうとせず、歯科での歯周治療と並行することが重要です。(1)(8)(10)
もう一度、今回の8つを振り返ります。
8位 栄養密度の低い食事ばかり続ける
7位 野菜・果物が極端に少ない食生活
6位 アルコールの多量摂取
5位 揚げ物・脂身の多い肉・加工肉中心
4位 超加工食品中心の食生活
3位 白米・パン・麺類などの単品大量摂取
2位 お菓子・菓子パン・甘いシリアル・アイス
1位 砂糖入り飲料を頻繁に飲む習慣
ただ、今日から全部を完璧に変える必要はありません。
まず、冷蔵庫を開けてみてください。
毎日飲んでいる甘いジュースや加糖コーヒーが入っているなら、次に買う一本を水か無糖のお茶にしてみる。
明日のお昼が菓子パンだけになりそうなら、ゆで卵とサラダを一緒に買ってみる。
これでいいんです。
そして、歯を磨いたときの出血が続いているなら、食生活を変えるだけで何か月も様子を見ず、かかりつけの歯科医院で一度歯周組織を診てもらってください。
正しい食事が歯周治療を支え、正しい歯周治療が歯を守る。
この両方が大切です。
10年後、20年後も自分の歯で食事を楽しむために、今日できる小さな一歩から始めてみてください。
7. よくある質問
Q1. 歯周病で絶対に食べてはいけないものはありますか?
一般的には「これを一口でも食べてはいけない」という食品はありません。重要なのは量と頻度、食生活全体です。特に、砂糖入り飲料やお菓子など遊離糖を含む食品・飲料を頻繁に摂る習慣は見直す価値があります。(1)
Q2. 歯周病なら白米はやめたほうがいいですか?
白米そのものを禁止する必要はありません。大盛りの白米だけ、おにぎりだけなど炭水化物に偏った食事を避け、タンパク質、野菜、食物繊維を含む食品と組み合わせましょう。
Q3. コーヒーは歯周病に悪いですか?
無糖のコーヒーそのものを「歯周病の原因」とする十分な根拠はありません。注意したいのは、砂糖やシロップを多く加えた缶コーヒー、加糖ラテなどを頻繁に飲む習慣です。
Q4. フルーツジュースなら健康的なので飲んでもいいですか?
100%果汁でも遊離糖を多く含むものがあります。WHOも果汁に含まれる遊離糖の摂取を制限するよう示しています。ビタミンCを摂る目的なら、食生活全体を整え、果物そのものを適量取り入れる方法も検討してください。(9)
Q5. ビタミンCサプリで歯周病は治りますか?
ビタミンCと歯周組織の健康との関連は報告されていますが、サプリだけで歯周炎そのものを治療できるとはいえません。歯周病の中心となるバイオフィルムや歯石に対しては、セルフケアと歯科医院での専門的治療が必要です。(4)(8)
Q6. 食事を改善すれば歯周病は治りますか?
食事改善だけを歯周病治療の代わりにすることはできません。2026年のスイス歯周病学会のポジションペーパーでも、栄養は機械的な歯周治療を「補完するもの」と位置づけられています。(10)
Q7. 歯茎から血が出るだけでも歯医者に行ったほうがいいですか?
出血が繰り返す場合は、一度歯科医院で確認してもらうことをおすすめします。歯周病かどうか、どの程度進んでいるかは、出血の有無だけでは判断できず、歯周ポケット検査や必要に応じた画像検査などによる評価が必要です。
引用文献
1/Kusama T, Nakazawa N, Takeuchi K, et al. Free Sugar Intake and Periodontal Diseases: A Systematic Review. Nutrients. 2022;14(21):4444.
URL/PubMed Central全文
論文要約/遊離糖を含む食品・飲料と歯周病との関連を調べた13研究をレビュー。11研究で頻回摂取と歯周病・歯肉炎の有病または発症との有意な関連を報告。ただし大半が横断研究で因果関係のエビデンスには限界がある。
この記事で引用した理由/砂糖入り飲料、お菓子、遊離糖と歯周病の関連についての記事の中心的根拠。
2/Sanz M, Ceriello A, Buysschaert M, et al. Scientific evidence on the links between periodontal diseases and diabetes. J Clin Periodontol. 2018;45(2):138-149.
URL/PubMed
論文要約/EFPと国際糖尿病連合によるコンセンサス。糖尿病と歯周炎の双方向性、AGE-RAGE、酸化ストレス、炎症性サイトカインなどの機序を整理。
この記事で引用した理由/高血糖・慢性炎症と歯周病との関係を説明する根拠。
3/Simpson TC, Clarkson JE, Worthington HV, et al. Treatment of periodontitis for glycaemic control in people with diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev. 2022;4.
URL/PubMed
論文要約/糖尿病と歯周炎の患者を対象としたRCTを評価し、歯周治療後3〜4か月のHbA1cが平均0.43ポイント低下。エビデンスの確実性は中等度。
この記事で引用した理由/歯周炎と血糖管理の臨床的な関連を示す根拠。
4/Tada A, Miura H. The Relationship between Vitamin C and Periodontal Diseases: A Systematic Review. Int J Environ Res Public Health. 2019;16(14):2472.
URL/PubMed
論文要約/14研究を評価。ビタミンC摂取量・血中濃度の低さと歯周病との関連を報告する一方、介入効果は病態によって異なる。
この記事で引用した理由/野菜・果物、ビタミンC、サプリメントの位置づけを安全に説明するため。
5/Oliveira LM, Pilecco KS, de Oliveira CA, et al. Alcohol Intake Influences the Occurrence and Progression of Periodontitis Differently According to Sex and Country Sociodemographic Development: A Two-Stage Systematic Review. Alcohol Alcohol. 2022;57(5):566-575.
URL/PubMed
論文要約/アルコールと歯周炎の前向き研究を評価。全体として明確な差は示されず、一部の男性集団でリスク上昇を認めたがエビデンスの確実性は低かった。
この記事で引用した理由/「アルコール=必ず歯周病を悪化させる」と断定しないため。
6/Glavin C, Gartshore J, Jackson G, et al. Does adopting a healthy diet improve periodontal parameters in patients susceptible to periodontal disease? A systematic review. Evidence-Based Dentistry. 2025;26:111.
URL/Nature掲載ページ
論文要約/9研究を評価し、8研究で低精製炭水化物・低飽和脂肪・高食物繊維・高栄養密度の食事と歯周指標の改善との関連を報告。ただし研究の質は低〜中等度。
この記事で引用した理由/食生活全体と歯周組織の関係を説明するため。
7/Woelber JP, Gärtner M, Breuninger L, et al. The influence of an anti-inflammatory diet on gingivitis. A randomized controlled trial. J Clin Periodontol. 2019;46(4):481-490.
URL/PubMed
論文要約/30人の歯肉炎患者を対象に4週間の食事介入を行い、抗炎症的な食事群で歯肉炎指標の改善を確認。
この記事で引用した理由/精製炭水化物を減らし、食物繊維や微量栄養素を増やす食生活に関する介入研究として引用。
8/Sanz M, Herrera D, Kebschull M, et al. Treatment of stage I-III periodontitis—The EFP S3 level clinical practice guideline. J Clin Periodontol. 2020;47 Suppl 22:4-60.
URL/PubMed
論文要約/Stage I〜IIIの歯周炎に対する段階的治療をまとめたEFP S3診療ガイドライン。口腔衛生管理、リスク因子への対応、歯肉縁上・歯肉縁下の専門的処置などを体系化。
この記事で引用した理由/食事だけで歯周炎を治療できず、機械的な歯周治療が治療の中心であることを示すため。
9/World Health Organization. Healthy diet. Updated 2026.
URL/WHO Healthy diet
資料要約/野菜、果物、豆類、全粒穀物などを含む多様な食事を推奨。遊離糖は総エネルギー摂取量の10%未満とし、果汁に含まれる遊離糖も制限対象としている。
この記事で引用した理由/遊離糖・果汁・野菜・食物繊維・脂質に関する国際的な食事指針として使用。
10/Fankhauser N, Frische A, Kaufmann ME, et al. SSP Position Paper: The Influence of Nutrition on Active and Supportive Periodontal Therapy. Swiss Dent J. 2026;136(2):64-76.
URL/PubMed
論文要約/スイス歯周病学会の2026年ポジションペーパー。植物性食品・食物繊維が多く遊離糖の少ない食事などを歯周治療を補完する要素と整理し、栄養は機械的治療の代替ではないと位置づける。
この記事で引用した理由/本記事の「食事は治療の土台・補助であり、歯周基本治療を置き換えない」という結論を最新情報で補強するため。
11/Bidinotto AB, Martinez-Steele E, Thomson WM, et al. Investigation of direct and indirect association of ultra-processed food intake and periodontitis. J Periodontol. 2022;93(4):603-612.
URL/PubMed
論文要約/米国成人4,809人を分析し、超加工食品由来のエネルギー割合と中等度・重度歯周炎との有意な関連を認めなかった。
この記事で引用した理由/超加工食品と歯周炎の関係について、肯定的研究だけを取り上げずエビデンスの不一致を示すため。
12/Cassiano LS, Peres MA, Motta JVS, et al. Periodontitis Is Associated with Consumption of Processed and Ultra-Processed Foods: Findings from a Population-Based Study. Nutrients. 2022;14(18):3735.
URL/PubMed
論文要約/ブラジルの集団を分析し、中等度・重度歯周炎と超加工食品摂取との関連を報告。ただし因果関係は確定できない。
この記事で引用した理由/超加工食品について異なる研究結果があることを公平に説明するため。











