夜中に歯がズキズキして眠れない。薬箱を開けたら、ロキソニンとカロナールが両方ある。
そんなとき、「強いほうを飲めばいいのか」「安全そうなカロナールのほうがいいのか」と迷いますよね。
先に結論をお伝えします。
虫歯や歯髄炎、抜歯後など、炎症が関わる急性の歯痛では、禁忌がなければロキソプロフェンのようなNSAIDsが第一選択になりやすい一方、NSAIDsが使いにくい体質・持病・妊娠・服薬状況では、アセトアミノフェンが選ばれることがあります。
ただし、どちらも「誰にでも安全」「多く飲めばよく効く」という薬ではありません。
そして、今日いちばん覚えて帰ってほしいのはここです。
痛み止めが効かないときは、量を増やすサインではなく、歯科へ相談するサインです。
痛み止めは炎症や痛みを一時的に抑える薬であって、虫歯や感染した神経そのものを治す薬ではありません。2024年の米国歯科医師会のガイドラインでも、NSAIDs単独またはアセトアミノフェンとの併用を急性歯痛の第一選択とする一方、薬物療法は確定的な歯科治療までの一時的な管理と位置づけています。(4)PubMed
歯痛にはロキソニンとカロナールのどちらが向いている?
多くの急性歯痛では、炎症を抑えるNSAIDsが有効です。ロキソニンの有効成分ロキソプロフェンはNSAIDsに分類され、歯痛や抜歯後疼痛にも適応があります。一方、カロナールの有効成分アセトアミノフェンも歯痛に使われますが、NSAIDsとは作用の特徴が異なります。(1)(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
ここで、歯の中で小さな火事が起きていると想像してください。
虫歯が神経の近くまで進み、歯髄や歯の根の周囲に炎症が起こると、プロスタグランジンなど痛みを増幅する物質が関わってきます。
ロキソプロフェンを含むNSAIDsは、そのプロスタグランジンが作られる過程を抑えます。
つまりイメージとしては、火に水をかけにいく薬です。
一方、アセトアミノフェンは作用機序が完全に一つで説明できる薬ではありませんが、NSAIDsほど末梢の抗炎症作用を期待する薬ではありません。
ですから、炎症性の歯痛ではNSAIDsが選ばれやすい、というのが基本です。
下顎智歯の抜歯後疼痛を扱ったCochraneレビューでは、イブプロフェン400mgはアセトアミノフェン1000mgより、6時間後に50%以上の疼痛緩和が得られた人の割合が高く、リスク比は1.47でした。(3)PubMed
ただし、ここは正確にお伝えしておきます。
この研究で直接比較されているのはイブプロフェンとアセトアミノフェンです。
日本でよく使われるロキソプロフェンそのものについて、同規模の直接比較データが豊富にあるわけではありません。
同じNSAIDsだからといって、薬そのものまで同じではない。この区別は大切です。
市販のロキソニンSは病院のロキソニンより「薄い」の?
いいえ。
「市販薬だから薄い」とは限りません。
ロキソニンSは1錠中、ロキソプロフェンナトリウム水和物68.1mg、無水物として60mgを含みます。医療用のロキソニン錠60mgも、無水物としてロキソプロフェンナトリウム60mgです。(1)(2)第一三共ヘルスケア
つまり、少なくとも有効成分量だけを見れば、
「市販のロキソニンSは病院の薬より弱いから、気軽に飲んでいい」
という理解は正しくありません。
むしろ知っておいてほしいのは、
気軽に買えるけれど、中身まで気軽ではない。
ということです。
ロキソニンSは第1類医薬品で、15歳未満は服用できず、服用中は他の解熱鎮痛薬やかぜ薬などを併用しないよう定められています。(2)第一三共ヘルスケア
ロキソニンよりカロナールを検討したほうがよい人は?
NSAIDsが使いにくい背景がある場合は、アセトアミノフェンが候補になります。ただし「この病気なら必ずカロナール」という単純な二択ではありません。持病や服薬によっては、どちらも自己判断せず確認したほうがよい場合があります。
喘息がある人、とくにNSAIDsで発作を起こしたことがある人
成人喘息患者のうち、アスピリンやNSAIDsで呼吸器症状が悪化するAERD、いわゆるアスピリン喘息を持つ人は約7%とするメタ解析があります。(6)PubMed
「7%なら、喘息の人の14〜15人に1人くらいですよね」
そう考えると、決して無視できる数字ではありません。
ただし、ここは台本より少し正確にしておきます。
喘息があるだけで、全員がNSAIDs禁忌になるわけではありません。
一方で、ロキソニンの電子添文では、NSAIDsで喘息発作が誘発される「アスピリン喘息」またはその既往歴がある人には投与しないことになっています。一般の気管支喘息も注意対象です。(1)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
そして、
「じゃあカロナールなら完全に安心ですか?」
ここも違います。
現行のカロナール電子添文では、アスピリン喘息またはその既往歴がある人について、1回の最大用量をアセトアミノフェン300mg以下としています。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
つまり、
「カロナールなら好きに飲んでいい」
ではありません。
過去にロキソニン、イブプロフェン、アスピリンなどを飲んだあと、ゼーゼーしたり息苦しくなった経験がある方は、自己判断でNSAIDsを使わないでください。
ワルファリンやDOACなど抗凝固薬を飲んでいる人
いわゆる「血液をサラサラにする薬」を飲んでいる方も要注意です。
27研究をまとめたメタ解析では、経口抗凝固薬とNSAIDsの併用は、抗凝固薬単独と比べて出血リスク、特に消化管出血のリスク上昇と関連していました。(8)PubMed
医療用ロキソニンの電子添文でも、ワルファリンや第Xa因子阻害薬などとの併用について注意が示されています。(1)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
「血がサラサラだから、胃から出血したら止まりにくくなるということですか」
大きくは、そう考えてください。
ただし、抗凝固薬の種類、腎機能、年齢などでもリスクは違います。
薬の名前が分からなくても、
「心房細動で薬を飲んでいる」
「脳梗塞や血栓の予防薬を飲んでいる」
という方は、市販のロキソニンを追加する前にお薬手帳を確認してください。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍がある人
NSAIDsはプロスタグランジン合成を抑えるため、胃粘膜を守る仕組みにも影響します。
医療用ロキソニンでは、現在消化性潰瘍がある人は禁忌で、潰瘍の既往歴がある場合も注意が必要です。(1)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
市販のロキソニンSも、「なるべく空腹時をさけて」服用するよう記載されています。(2)第一三共ヘルスケア
痛いときは食欲もありません。
「水だけで飲んだほうが早く効きそう」
と思う方もいますが、そこは自己流にしないでください。
胃潰瘍の治療歴がある、黒い便が出たことがある、消化管出血を指摘されたことがある、といった方は医師・歯科医師・薬剤師に相談しましょう。
腎機能が低下している人・高齢者
NSAIDsは腎臓の血流に関わるプロスタグランジンを抑えるため、腎機能を悪化させることがあります。
医療用ロキソニンでは、重篤な腎機能障害は禁忌です。(1)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
ただし、
「じゃあ腎臓が悪ければカロナールなら大丈夫」
とも言い切れません。
カロナールの現行電子添文でも、腎障害がある患者では減量や投与間隔の延長を考慮するとされています。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
健診でクレアチニンやeGFRを指摘されたことがある方、高齢の方、脱水している方は、「ロキソニンかカロナールか」だけで決めないほうが安全です。
妊娠中の人
妊娠中は、とくに自己判断でNSAIDsを使わないでください。
ロキソニンは妊娠後期では投与しないこととされ、それ以前の妊娠でも必要性を慎重に検討して使用します。(1)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
では、カロナールなら安全なのでしょうか。
ここも「必ず安全」と断言するのは適切ではありません。
カロナールの現行電子添文では、妊婦または妊娠している可能性がある女性では、リスクを考慮し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に使用するとされています。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
歯が痛い妊婦さんは、
「妊娠中です」
だけではなく、
「妊娠○週です」
まで産科と歯科に伝えてください。
15歳未満の子ども
ここは、はっきりお伝えします。
大人に処方された余りのロキソニンを、お子さんに分けて飲ませるのはやめてください。
市販のロキソニンSは15歳未満は服用できません。(2)第一三共ヘルスケア
また、医療用ロキソプロフェンについても、小児を対象とした臨床試験は実施していないと電子添文に記載されています。(1)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
小児の解熱・鎮痛ではアセトアミノフェンが使われますが、量は体重で決まります。
カロナールの電子添文では、小児科領域に対して通常、体重1kgあたり1回10〜15mg、4〜6時間以上あけ、1日総量60mg/kgを限度としています。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
ただし、この数字を使って家庭で大人用の薬を分割することを勧めているわけではありません。
子どもは必ず、小児科・歯科・薬剤師に年齢と体重を伝えて確認してください。
なお、2001年には厚生労働省が、ジクロフェナクナトリウムについて、小児のインフルエンザや水痘などウイルス性疾患での使用に関する注意を強化しました。(10)厚生労働省
これは、
「ロキソニンを飲むと必ず脳症になる」
という意味ではありません。
対象になった薬と根拠を混同しないことも、医療情報では非常に大切です。
カロナールは「効かない薬」ではない
カロナールは「弱いから効かない」と一概には言えません。日本では成人の鎮痛用量上限が現在より低かった時期があり、2011年に成人の鎮痛用量上限が1回1000mg、1日4000mgへ拡大されています。(12)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
現在のカロナール電子添文では、成人の各種疼痛について通常、
1回300〜1000mg、4〜6時間以上あけ、1日総量4000mgを限度
としています。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
ここだけ聞くと、
「昔300mgで効かなかったなら、今度は1000mg飲めばいいんですね」
と思うかもしれません。
そこは、はっきり止めます。
4000mgという数字は、
「誰でも自分でそこまで増やしてよい」という意味ではありません。
適切な量は、年齢、体重、肝機能、腎機能、飲酒習慣、併用薬、喘息の種類などによって変わります。
特に先ほどお話ししたアスピリン喘息では、別に1回300mg以下という制限があります。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
処方薬なら処方どおり。
市販薬なら、その商品の添付文書どおり。
効かなければ、自分で数字を増やすのではなく相談してください。
カロナールで本当に注意したいのは「重複」と「肝障害」
カロナールは比較的使いやすい薬ですが、過量投与では重い肝障害を起こすおそれがあります。特に注意したいのが、本人が「別の薬」だと思っている複数製品に、同じアセトアミノフェンが含まれているケースです。
カロナールの現行電子添文の警告欄には、アセトアミノフェンを含む他の薬剤、一般用医薬品を含む、との併用によって過量となり、重篤な肝障害が起こるおそれがあるため併用を避けるよう記載されています。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
総合感冒薬、解熱鎮痛薬、頭痛薬の中には、アセトアミノフェンが入っている製品があります。
飲んでいる本人は、
「風邪薬とカロナールだから別の薬」
と思ってしまう。
でも、体の中から見れば、同じ成分が重なっていることがあります。
だから覚えてほしいのは、この一言です。
商品名ではなく、成分名を見る。
今、薬箱の風邪薬や頭痛薬を一度見てみてください。
「アセトアミノフェン」
と書いてありませんか。
カロナールを使う前に、それらが重複していないか確認する。これだけでも、薬の事故を減らす大きな一歩になります。
カロナールとお酒は一緒でいい?
多量の飲酒をする方は特に注意が必要です。
カロナールの電子添文では、アルコール多量常飲者は肝障害が現れやすいとされ、相互作用の項でもアルコール常飲との関係が注意喚起されています。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
ただ、
「カロナールを飲んだ日は全員が一滴も飲んではいけない」
という一律のルールに置き換えるのも適切ではありません。
大切なのは、肝障害のリスクを軽く考えないことです。
普段から飲酒量が多い方、肝機能異常を指摘されている方は、アセトアミノフェンを使う前に医師・薬剤師へ相談してください。
ロキソニンとカロナールは併用できる?
医療者が患者さんの持病や服薬を確認したうえで、NSAIDsとアセトアミノフェンを組み合わせることはあります。ただし、家庭の薬箱の中だけで自己流に組み合わせることはおすすめできません。
2024年の米国歯科医師会の急性歯痛ガイドラインでは、NSAIDs単独、またはNSAIDsとアセトアミノフェンの併用が第一選択として位置づけられています。(4)PubMed
成人の抜歯後疼痛を扱ったネットワークメタ解析でも、イブプロフェン200〜400mgとアセトアミノフェン500〜1000mgの組み合わせは、有効性が高い群に入りました。(5)PubMed
ここで、
「じゃあロキソニンとカロナール、両方飲んでいいんですね」
と思われるかもしれません。
そこが大事なところです。
これは、患者さんの持病、胃・腎臓・肝臓の状態、喘息、妊娠、抗凝固薬などを確認して組む治療です。
さらに市販薬には、1つの商品に複数の成分が入っているものがあります。
併用そのものが悪いのではありません。把握しないまま足すのが危ないんです。
ロキソニンやカロナールが効かない歯痛はどうすればいい?
規定量を使っても効かない歯痛は、薬を増やすより歯科受診を優先するサインです。急性歯痛に対する鎮痛薬は、原因治療までの一時的な管理と考えてください。(4)PubMed
「痛くて眠れないのに、明日歯医者へ行ってくださいと言われても困る」
その気持ちは当然です。
今、痛いんですから。
でも、痛み止めを追加しても、歯の中の原因がなくなるわけではありません。
神経の炎症が強く進んでいる。
歯の根の先に炎症や膿がたまっている。
噛み合わせるだけで強く響く。
こうした状態では、薬だけでコントロールするのが難しくなることがあります。
最初の火事の話に戻りましょう。
薬を足し続けるというのは、火が消えないからといって火災報知器を何度もいじっているようなものです。
火元は、歯の中にあります。
ですから、
「効かない=もう1錠」ではなく、「効かない=相談・予約」
と覚えてください。
市販のロキソニンSも服用量・間隔が定められており、1〜2回服用しても症状がよくならない場合は、服用を中止し医師・歯科医師・薬剤師に相談するよう記載されています。(2)第一三共ヘルスケア
夜になると歯が痛くなるのはなぜ?
「昼間は大丈夫だったのに、夜になるとズキズキする」
これはよく聞きます。
ただし、「横になると頭の血流が増えるから」という一つの説明だけで決めつけるのは避けたほうが正確です。
夜は周囲の刺激が少なくなり、痛みに意識が向きやすくなることもあります。
また、歯髄炎など強い炎症があれば、時間帯にかかわらず自発痛が続きます。
夜間痛が続く、痛みで目が覚める、鎮痛薬を飲んでも眠れない。
そういうときは、早めに歯科で原因を確認してください。
歯痛で今すぐ受診したほうがよい危険サイン
顔や顎の下まで腫れている、口が開きにくい、飲み込みにくい、息苦しい、発熱や強い全身症状がある場合は緊急度が高くなります。感染が歯の周囲を越えて広がっている可能性があるため、痛み止めだけで様子を見ないでください。(9)PubMed
その日のうちに相談・救急受診も検討したい症状
台本の受診目安を、実際に使いやすい形にすると次のようになります。
- 顔や顎の下の腫れが広がっている
- 口が十分に開かない
- 飲み込みにくい
- 息苦しい
- 発熱を伴い全身状態が悪い
夜間で通常の歯科医院が閉まっている場合は、地域の休日夜間診療や、口腔外科のある病院の救急受診を検討してください。
特に、呼吸しにくい、唾も飲み込みにくい、腫れが急速に広がるといった場合は、朝まで鎮痛薬だけで我慢する状況ではありません。
翌日から数日以内に歯科へ行きたい症状
規定量の鎮痛薬を使っても効かない。
夜中に痛みで目が覚める。
噛むと強く響く。
痛みが繰り返す。
こうした場合です。
薬を飲んだら痛みが消えたとしても、
火元まで消えたとは限りません。
私はここを、患者さんにこうお伝えしたいんです。
痛みが消えた日が、いちばん予約を取りやすい日です。
「治ったからキャンセル」ではなく、痛みが落ち着いているうちに原因を確認しましょう。
痛み止めを月15日以上飲んでいるなら、使い方も見直す
歯痛のために鎮痛薬を月15日以上必要としているなら、それ自体が歯科で原因治療を受けるべきサインです。ただし「月15日飲んだら薬物乱用頭痛になる」という意味ではありません。
ここは元台本から、医学的に少し補足します。
国際頭痛分類ICHD-3の「薬剤の使用過多による頭痛」は、もともと頭痛疾患がある患者さんにおいて、非オピオイド鎮痛薬を月15日以上、3か月を超えて定期的に使用し、頭痛自体も月15日以上ある場合などを基準にしています。(11)ICHD-3
つまり、
「歯痛で鎮痛薬を月15日使った」
だけで、この診断になるわけではありません。
ただし、歯の痛みのために月15日も鎮痛薬が必要なら、別の意味で十分に問題です。
カレンダーに服用した日に印をつけてみてください。
毎週のように薬を飲んでいるなら、痛み止めを変えるより、歯の原因を確認するほうが先です。
「ロキソニンは何錠?カロナールは何錠?」と聞かれたときに大事なこと
錠数だけで判断してはいけません。特にカロナールは200mg錠、300mg錠、500mg錠があり、同じ1錠でも含まれるアセトアミノフェン量が違います。
市販のロキソニンSは、15歳以上で1回1錠、通常1日2回まで。再度症状が現れた場合は3回目まで服用でき、間隔は4時間以上とされています。(2)第一三共ヘルスケア
一方、医療用ロキソニン錠60mgは、疾患や頓用かどうかで用法が異なります。(1)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
カロナールについては、成人の「各種疾患・症状の鎮痛」という医療用の用法として、1回300〜1000mg、4〜6時間以上あけ、1日総量4000mgまでとされています。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
ですが、これは、
「市販薬を自分で4000mgまで飲んでいい」
という意味ではありません。
アスピリン喘息では1回300mg以下という別の制限がありますし、肝障害、腎障害、飲酒、低栄養、他のアセトアミノフェン含有薬なども確認しなければなりません。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
ですから、
「カロナールは何錠飲めば歯痛に効きますか?」
という質問には、錠剤の規格や患者さんの状態を確認せず、錠数だけ答えることはできません。
処方薬なら処方どおり。
市販薬なら製品の添付文書どおり。
それでも効かないなら、追加ではなく相談です。
歯が痛くて今夜すぐ歯医者に行けないときは?
今すぐ受診できない場合でも、自己判断で用量を超える、成分を見ずに別の鎮痛薬や風邪薬を追加する、大人の薬を子どもに分ける、といった行動は避けてください。
規定どおり薬を使って痛みがある程度落ち着き、顔の腫れ、発熱、飲み込みにくさ、息苦しさなどがなければ、翌日以降できるだけ早く歯科の予約を取ります。
「朝になったら痛くなくなったから、治ったのでは?」
そう思いますよね。
でも、痛みが消えたことと、原因が治ったことは同じではありません。
歯髄の状態によっては痛みが一時的に変化することもあります。
反対に、顔や顎下の腫れが広がる、飲み込みにくい、呼吸が苦しい、全身状態が悪い場合は、時間外だからと朝まで我慢せず、救急を含めた医療機関への相談を検討してください。(9)PubMed
薬は、歯科治療までの大切な橋渡しです。
でも、橋を渡った先には歯科治療があります。
痛み止めだけで何日もその場にとどまらないことが、結局はいちばん安全です。
歯科を受診したら何を伝えればいい?
「痛み止めが効きません」に、持病や普段の薬を一言加えるだけで、安全な薬の選択につながります。
例えば、
「胃潰瘍の治療歴があります」
「腎機能を健診で指摘されています」
「喘息があります。以前、鎮痛薬で息苦しくなったことがあります」
「ワルファリンを飲んでいます」
「妊娠○週です」
「市販の風邪薬も飲んでいます」
こうした情報です。
迷ったら、この一言を使ってください。
「胃や腎臓が少し心配です。今飲んでいる薬も含めて、私に合う痛み止めを一緒に考えてもらえますか」
最終的に何をどれだけ使うかを決めるのは、あなたを診察する医師・歯科医師です。
でも、自分の不安や服薬情報を最初に伝えられるかどうかで、安全性の確認はかなり変わります。
できれば、お薬手帳も持参してください。
歯痛でロキソニンとカロナールに迷ったら覚えてほしい3つ
最後に、数字を全部覚える必要はありません。
覚えて帰ってほしいのは、3つです。
1つ目。市販薬だから病院の薬より薄いとは限りません。
ロキソニンSと医療用ロキソニン錠60mgは、ロキソプロフェン量が無水物として1錠60mgで同じです。(1)(2)第一三共ヘルスケア
2つ目。薬を足す前に、商品名ではなく成分名を見る。
特にアセトアミノフェンは、風邪薬や頭痛薬にも含まれていることがあり、重複による過量投与は重い肝障害につながるおそれがあります。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
3つ目。効かないのは、増やすサインではなく相談のサイン。
急性歯痛の鎮痛薬は、歯科で原因治療を受けるまでの一時的な管理です。(4)PubMed
今夜、薬箱を開けたあなたへ。
もう、
「どっちが強いんだろう」
だけで決める必要はありません。
NSAIDsを使える状態なのか。
アセトアミノフェンを選ぶべき理由があるのか。
他の薬と成分が重なっていないか。
そこを確認していけばいいんです。
そして、明日やることは1つです。
薬箱の解熱鎮痛薬と風邪薬を全部出して、「アセトアミノフェン」と書かれているものを確認してください。
そのうえで、歯が痛んだなら予約を取る。
正しい知識は、痛み止めを上手に選ぶためだけではありません。
「もう薬だけで我慢する段階ではない」と気づくためにも必要なんです。
7. よくある質問
Q1. 歯痛にはロキソニンとカロナールのどちらが効きますか?
炎症が関係する急性歯痛では、禁忌がなければNSAIDsが選ばれやすいです。ただし、喘息の種類、胃潰瘍、腎機能、抗凝固薬、妊娠などによってはアセトアミノフェンが検討されます。個人の状態で選択は変わります。(4)PubMed
Q2. ロキソニンとカロナールは一緒に飲めますか?
医師や歯科医師が状態を確認したうえで併用することはあります。しかし、市販薬を含めて自己判断で組み合わせるのは避けてください。成分重複や持病との相性を確認する必要があります。(4)(5)PubMed
Q3. ロキソニンを飲んでも歯痛が治らないときは追加していいですか?
表示・処方された量を超えて自己判断で追加するのではなく、歯科へ相談してください。鎮痛薬で抑えきれない痛みは、原因治療が必要な段階である可能性があります。
Q4. 喘息があるとロキソニンは飲めませんか?
すべての喘息患者が一律に禁忌というわけではありません。ただし、アスピリン喘息やNSAIDsで喘息発作を起こした既往がある人にはロキソプロフェンは禁忌です。一般の気管支喘息でも注意が必要です。(1)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
Q5. カロナールと風邪薬は一緒に飲めますか?
風邪薬にアセトアミノフェンが含まれている場合は、重複して過量になるおそれがあります。商品名ではなく成分表示を確認し、アセトアミノフェンが重複する場合は併用を避けてください。(7)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
Q6. 歯痛で救急に行く目安はありますか?
顔や顎下の腫れが広がる、口が開きにくい、飲み込みにくい、息苦しい、発熱・全身状態の悪化がある場合は、感染が広がっている可能性があり緊急評価が必要になることがあります。(9)
引用文献
(1)第一三共株式会社. ロキソニン錠60mg/ロキソニン細粒10% 電子添文. 2025年3月改訂.
URL:PMDA ロキソニン錠60mg
要約:ロキソプロフェン60mgの用法、消化性潰瘍・重篤な腎障害・アスピリン喘息・妊娠後期などの禁忌、抗凝固薬等との相互作用を記載。
引用理由:ロキソニンの成分量、禁忌、妊娠、腎機能、喘息、抗凝固薬に関する一次情報として使用。独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
(2)第一三共ヘルスケア株式会社. ロキソニンS 添付文書・製品情報.
URL:ロキソニンS公式製品情報
要約:15歳以上、1回1錠、通常1日2回まで、4時間以上あけること、15歳未満は服用しないこと、他の解熱鎮痛薬等との併用を避けることを記載。
引用理由:市販ロキソニンSの成分量と安全な使用条件の確認に使用。第一三共ヘルスケア
(3)Bailey E, Worthington HV, van Wijk A, et al. Ibuprofen and/or paracetamol for pain relief after surgical removal of lower wisdom teeth. Cochrane Database Syst Rev. 2013;(12):CD004624.
URL:PubMed PMID 24338830
論文要約:下顎智歯抜歯後の疼痛を対象としたシステマティックレビューで、イブプロフェン400mgはアセトアミノフェン1000mgより、6時間後に50%以上の疼痛緩和が得られる割合が高かった。
引用理由:NSAIDsとアセトアミノフェンの歯科疼痛における鎮痛効果比較の根拠として使用。PubMed
(4)Carrasco-Labra A, et al. Evidence-based clinical practice guideline for the pharmacologic management of acute dental pain in adolescents, adults, and older adults. J Am Dent Assoc. 2024;155(2):102-117.
URL:PubMed PMID 38325969
論文要約:急性歯痛に対して、NSAIDs単独またはアセトアミノフェンとの併用を第一選択として位置づけ、薬物療法を歯科的原因治療までの一時的管理とする診療ガイドライン。
引用理由:記事全体の「NSAIDsが第一選択になりやすい」「効かなければ原因治療」という軸の根拠として使用。PubMed
(5)Miroshnychenko A, Ibrahim S, Azab M, et al. Acute Postoperative Pain Due to Dental Extraction in the Adult Population: A Systematic Review and Network Meta-analysis. J Dent Res. 2023;102(4):391-401.
URL:PubMed PMID 36631957
論文要約:82件のRCTを対象とし、イブプロフェンとアセトアミノフェンの併用などが抜歯後疼痛で高い疼痛緩和効果を示した。
引用理由:NSAIDs+アセトアミノフェン併用の有効性を説明するために使用。PubMed
(6)Rajan JP, Wineinger NE, Stevenson DD, White AA. Prevalence of aspirin-exacerbated respiratory disease among asthmatic patients: A meta-analysis. J Allergy Clin Immunol. 2015;135(3):676-681.e1.
URL:PubMed PMID 25282015
論文要約:成人喘息患者におけるAERDの有病率を約7.15%と推定。重症喘息ではより高かった。
引用理由:「喘息患者の一部でNSAIDsにより発作が誘発される」という説明の根拠として使用。PubMed
(7)あゆみ製薬株式会社. カロナール錠200/300/500 電子添文. 2026年8月改訂.
URL:PMDA カロナール錠
要約:成人鎮痛用量、小児用量、アセトアミノフェン含有薬との重複による肝障害、アスピリン喘息での1回300mg以下、アルコール多量常飲、腎障害、妊婦等への注意を記載。
引用理由:カロナールの用量・重複・安全性について最も重要な一次情報として使用。独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
(8)Zheng Y, Zhang N, Tse G, Li G, Lip GYH, Liu T. Co-administered oral anticoagulants with nonsteroidal anti-inflammatory drugs and the risk of bleeding: A systematic review and meta-analysis. Thromb Res. 2023;232:15-26.
URL:PubMed PMID 39492109
論文要約:27研究を統合し、経口抗凝固薬とNSAIDsの併用が出血、とくに消化管出血のリスク上昇と関連することを示した。
引用理由:抗凝固薬使用者がNSAIDsを自己判断で追加しないほうがよい理由を説明するために使用。PubMed
(9)Lockhart PB, Tampi MP, Abt E, et al. Evidence-based clinical practice guideline on antibiotic use for urgent management of pulpal- and periapical-related dental pain and intraoral swelling. J Am Dent Assoc. 2019;150(11):906-921.e12.
URL:PubMed PMID 31668170
論文要約:歯髄・根尖性の歯痛や腫脹について、局所処置を重視し、全身症状や深部感染が疑われる場合には緊急評価が必要となることを示す。
引用理由:顔面腫脹・全身症状などの受診目安の根拠として使用。PubMed
(10)厚生労働省. 小児のライ症候群等に関するジクロフェナクナトリウムの使用上の注意の改訂について. 2001年5月30日.
URL:厚生労働省資料
要約:小児の水痘・インフルエンザなどウイルス性疾患で、ジクロフェナクナトリウム使用上の注意を強化した行政資料。
引用理由:対象薬がジクロフェナクであり、ロキソプロフェンの危険性と混同しないために使用。厚生労働省
(11)International Headache Society. International Classification of Headache Disorders, 3rd edition: Non-opioid analgesic-overuse headache. 2018.
URL:ICHD-3 8.2.3
要約:既存の頭痛疾患を持つ患者で、非オピオイド鎮痛薬を月15日以上、3か月超使用することなどを薬剤使用過多による頭痛の基準として定義。
引用理由:「月15日」の意味を歯痛患者へ誤って拡大解釈しないために使用。ICHD-3
(12)医薬品医療機器総合機構. アセトアミノフェンに関する審査報告・承認経緯.
URL:PMDA審査報告関連資料
要約:2011年1月に成人の鎮痛用量上限が1回1000mg、1日4000mgへ変更された経緯を記載。
引用理由:「以前カロナールが効かなかった」という患者体験と、日本での用量変更の背景を説明するために使用。独立行政法人 医薬品医療機器総合機構











