
こんにちは。歯科医師の川瀬です。
連日の猛暑、皆様体調いかがでしょうか?
さて今回は、少しお時間が経ってしまいましたが、ドイツ・ケルンで開催された世界最大級の歯科見本市、IDS 2025(International Dental Show)に参加してきた体験をシェアしたいと思います。
数えきれないほどの新製品やテクノロジーに出会える中で、ひときわ今回驚いたのは、
アメリカNeocis社が開発した全自動インプラント埋入ロボット「Yomi(ヨミ)」の実演と体験でした。
◎IDSとは?
IDS(International Dental Show)は、2年に一度ドイツ・ケルンメッセで開催される、歯科業界最大規模の国際展示会。
世界中から歯科医師、技工士、メーカー、ディーラーが集まり、最新の機器・素材・システムが一堂に会する舞台です。
2025年は「AI」「ロボティクス」「フルデジタル」がキーワード。
とくにインプラント分野では、手技の自動化と正確性の向上に注目が集まっていました。
◎衝撃の登場:「Yomi(Neocis社製ロボット)」とは?
Yomiは、アメリカ・フロリダ州に拠点を置くNeocis社が開発した、
世界初のFDA承認歯科用ロボット手術支援システムです。
従来のインプラント埋入ナビゲーションシステムとは一線を画し、
リアルタイムでドリルの位置・角度・深度を制御しながら手術をサポートしてくれます。
主な特徴:
CT画像と3Dプランニングを完全連携
術中にドリルの角度・深さをリアルタイム補正
物理的にドリルがズレない構造で、人の手ブレを排除
医師はアームの動きに沿って操作するだけ(※完全自動ではなく、医師が主体)
◎実際にYomiを体験してみて
私自身、会場でYomiのデモ機を実際に操作体験する機会がありました。
驚いたのは、ドリルの補正能力の高さ。
自分の手がほんのわずかにズレたとしても、ロボットが瞬時に軌道を修正し、計画された埋入位置から外れないように導いてくれるのです。
初めて触れたときは、「これは本当に臨床で使えるのか?」という半信半疑の気持ちもありましたが、
実際の操作感はとてもスムーズで直感的。
「これなら安心して任せられる」と感じられるレベルの安定性と精度でした。
◎Yomiが歯科にもたらす可能性は?
導入メリットとして、以下が考えられます。
・経験差を補える(新人ドクターのサポートに◎)
・手技の標準化と精度の安定化
・医療の品質均一化にも貢献
つまり、今後ますます求められる予測可能で失敗の少ない治療の実現に、Yomiは大きく寄与してくれる可能性があります。
◎日本での導入は?
現時点(2025年時点)では、日本国内での導入例はありません。
欧米では一部の教育機関や歯科医院での導入例もあるとのことです。
◎最後に
歯科医療の未来は“人×テクノロジー”
今回のIDS 2025を通して強く感じたのは、「テクノロジーは脅威ではなく、パートナーになる時代」だということ。
Yomi(Neocis社製ロボット)をはじめとした革新的技術は、
あくまで人の技術と判断力を補完し、より高いレベルの治療を可能にするものです。
今後、私たち歯科医療従事者が目指すべきは、
「人だからこそできること」と「テクノロジーだからこそ実現できること」を見極め、両者をどう融合させていくかなのだと実感しました。